
探究の時間、生徒が調べ物をしている間、どんな声かけをすればいいのか分からなくて…。

知識がなくても、問いかけならできます。
場面ごとの声かけ例をまとめてみました。
探究学習では、教員は「教える」のではなく「伴走する」役割だと言われます。
しかし、教えることに慣れている教員にとって、専門外のテーマにどう関わればよいのかは難しい問題です。
生徒が黙々と調べ物をしている教室で、何を言えばいいか分からない。
結果として、調べ学習をさせたまま職員室に戻ってしまう。
そんな場面も、正直なところ珍しくありません。
そこで今回は、文献調査の場面で使える声かけを20個まとめました。
どれも知識がなくてもできる問いかけです。
手元に置いて、生徒の状態に合わせて使ってみてください。

探究担当の先生は、こうしたリストを校内で共有すると、先生方のサポートにもなります。
高校の数学教員として15年以上授業を行っています。
ただ学習内容を教えるのではなく、「学び方を教える」をモットーに授業作りをしています。
探究学習では、生徒が自分の問いと向き合う個人探究を中心に、外部連携も交えながら学びづくりに取り組んできました。
資料・文献を探す段階でのつまずき
① 何から探せばいいか分からない
図書館や書店で実際に棚を眺めてみることを勧めます。
目当ての本を探すだけでなく、関連する棚をぶらぶら歩くことで、思わぬ本と出会えるからです。
また、論文であればCiNiiやGoogle Scholar、統計データであればe-Statなど、目的に応じた検索サイトも紹介しておくとよいでしょう。
② 検索キーワードが思いつかない
調べたいことはあるのに、何と入力すればいいか分からない状態です。
ここは生成AIが役立ちます。
「〇〇について調べたい。学術的なキーワードは何ですか?」と聞けば、専門用語の候補が出てきます。
③ 調べる範囲が広すぎる
「教育について調べたい」のような、漠然とした状態です。
マンダラチャートなどを使って、キーワードを細分化していくと、自分が本当に知りたいことが見えてきます。
▼マンダラチャートやマインドマップを使ったテーマ設定の支援については、こちらの記事でも紹介しています。
④ 調べる範囲が狭すぎる
逆にテーマを限定しすぎて、文献がまったく見つからない場合です。
そのような場合は、関連するキーワードを別に見つけてみたり、視点を変えてみたりすることも有効です。
⑤ 専門書が手に入らない
学術的な内容を調べているとき、欲しい書籍が図書館にもなく、購入も難しい場合があります。
多くの図書館には、他の図書館から本を取り寄せる相互貸借という仕組みがあります。
自治体の図書館を通して申し込めることも多いので、司書の先生に相談してみるよう促します。
読む段階でのつまずき
⑥ 情報が一方向に偏っている
賛成側の意見だけを集めている、あるいは一つのメディアの論調をそのまま受け取っている状態です。
このようなときは、対立軸に気づかせ、その上で自分の考えを持てるように支援します。
メディアは、実は一方の意見しか語っていないことも多い。
そこに気づくだけでも、情報の見方が変わります。
また、書籍の内容をそのまま信じ込んでしまう生徒にも、同じ問いかけが有効です。
⑦ ネットの情報だけで済ませている
検索上位の記事を読んで終わり、あるいは同じサイトばかり見ている状態です。
まずは気になったキーワードを、書籍で深掘りするよう促します。
さらに一歩進めるなら、行動につながる問いかけが効きます。
調べるだけでなく、人に会いに行く。
それだけで、探究は大きく前進します。
⑧ 論文が難しくて読めない
論文にたどり着いたものの、内容が理解できない場合です。
論文に慣れていない高校生にとっては、難しさを感じることもあるでしょう。
そのような際、似たキーワードで論文を検索したり、一般向けに書籍を出していないか確認することも有効です。
⑨ 情報の信頼性が判断できない
怪しいサイトの情報を、そのまま使ってしまう生徒もいます。
頭ごなしに否定するのではなく、確認の視点を問いかけます。
⑩ 古い情報を使っている
古いデータを最新だと思い込んでいる場合です。
⑪ 統計データの見方が分からない
グラフや数値を見つけても、そこから何を読み取ればいいか分からない生徒がいます。
特に注目したいのが、データの範囲です。
グラフの始点や終点には、作成者の意図が表れることがあります。
データを疑う視点は、情報リテラシーそのものです。
⑫ 日本(自分の地域)のことしか調べていない
比較の視点がないまま、国内や自分の地域の情報だけで完結している状態です。
⑬ 読む時間が確保できない
部活や課題で忙しく、腰を据えて読む時間がない生徒も多いです。
そのようなときは、最初から全部読む必要はないと伝えます。
整理する段階でのつまずき
⑭ 読んだ内容を自分の言葉にできない
丸写しになってしまう、要約ができないという場面です。
ここでは、読む視点を3つに絞ることを勧めています。
- 新しい発見だったこと
- もっと知りたくなったこと
- これは違うのではないかと思ったこと
この3点だけを意識して読むと、自分の考えが自然と入ってきます。
⑮ 引用元が分からなくなる
後から「これはどの本に書いてあったか」が分からなくなる問題です。
スマートフォンで該当ページを撮影し、クラウドに貯めておくことを勧めています。
学校で契約しているGoogleドライブなどは、容量もほぼ気にせず使えます。
書籍名をフォルダ名にしておけば、後の整理も引用も楽になります。
⑯ 調べるほど、自分の考えが分からなくなる
情報が増えるほど混乱し、自分の意見が持てなくなる生徒がいます。
原因の多くは、集めた情報をすべて等しく扱おうとしていることにあります。
整理の軸を示すと、頭が整理されていきます。
事実と意見を分ける。自分の問いとの関係で仕分ける。この2段階だけで、集めた情報はかなりすっきりします。
⑰ 集めただけで満足している
情報を並べて終わり、という状態です。
なぜ情報を集めたのか、そこから自分は何を得たのかを言語化する支援をするとよいでしょう。
文献調査が進まなくなったときのつまずき
⑱ 先行研究がありすぎて、やる意味を見失う
わかりやすいテーマを設定しているとき、「もう研究され尽くしている」と感じて止まってしまう生徒がいます。
そのようなときは、こう伝えます。
すべてを一から生み出す必要はありません。
既存の研究に、自分の視点を少し加える。
それが研究というものです。
⑲ 文献が何も見つからない
逆に、ニッチすぎて文献が存在しない場合もあります。
これは、むしろチャンスです。
一次体験、つまり自分で調査や実験をすることで、オリジナルのデータが生まれます。
⑳ 調べ終わったが、次に何をすればいいか分からない
文献調査は終わったものの、そこから動けない状態です。
さらに調査が必要なのか、それとも自分で一次情報を掴みにいくのか。
生徒の反応に合わせて声掛けをしていくことが大切です。
(番外)途中で興味が変わってしまった
調べているうちに、別のことが気になり始める生徒もいます。
また、「テーマ変更=やり直し」と感じてしまう生徒もいます。
これらは決して悪いことではありません。
探究のサイクルを回す中で関心が移るのは自然なことです。
そこで止めさせるより、動いている方向を尊重したほうが、結果として深まります。
声かけリストは、校内で共有する

これだけあると、迷ったときに使えそうです。

探究担当の先生が、校内で共有しておくと、さらに効果的です。
探究は、全体を運営する担当教員だけでなく、ゼミ担当やクラス担任など全教員が伴走するものです。
しかし、探究に慣れていない先生ほど「何を言えばいいか分からない」と感じています。
結果として、生徒に調べ学習をさせたまま、別の仕事をしてしまうこともあります。
そのようなとき、声をかける言葉が手元にあるだけで、その状況はかなり変わります。
探究担当者が、こうしたリストを作って共有しておくことをおすすめします。
もちろん、この記事の内容をそのまま使っていただいても構いません。
自校の生徒の実態に合わせて、少しずつ言葉を足していけば、学校独自の資産になっていきます。
まとめ:知識がなくても、問いかけはできる
今回は、文献調査の場面で使える声かけを20個紹介しました。
改めて整理します。
探究の伴走で大切なのは、答えを教えることではありません。
専門外のテーマでも、生徒に問いかけることはできます。
その問いかけが、生徒の思考を少しずつ前に進めていきます。
「何を言えばいいか分からない」と感じたときは、ぜひこのリストを開いてみてください。

今回は文献調査編でした。
他の場面についても、順次まとめていきます。
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