
私も今年で30代になりました。
20代の頃は「とにかく目の前の授業や業務をなんとかする」で精いっぱいでしたが、次のステップに進みたいと思っています。

30代は教員のキャリアの分岐点ですね。
「20代で固めた基礎の上に、何を積み上げていくか。」一緒に整理してみましょう!
「20代のうちは無我夢中で目の前の仕事に向き合ってきた。」
「ふと気づくと30代。」
そんな先生方も多いのではないでしょうか。
20代の頃は「分からないなりに必死で走る」で許されました。
しかし30代に入ると、周りからの期待も自分への要求も少しずつ変わっていきます。
- クラス担任や日々の授業、部活動で手一杯のまま、学年や学校全体のことまで頭が回らない
- 管理職や経営の視点が見えず、ミドルリーダーとしての立ち位置に戸惑う
- 校内では「すごい人」のロールモデルが見えにくくなり、かといって外を見る余裕もない
こうした感覚は、多くの30代教員に心当たりがあるのではないでしょうか。
そこで今回は、30代の教員がしておきたい9つの実践を紹介します。
20代の基礎固めの先にある「キャリアを広げ深める10年」を、一緒に設計していきましょう。
▼20代の基礎固めについては、姉妹記事もどうぞ。

私自身の30代での取り組みの中で見えてきたものを、体験談を交えて紹介していきます!
高校の数学教員として15年以上授業を行っています。
ただ学習内容を教えるのではなく、「学び方を教える」をモットーに授業作りをしています。
30代になって、仕事と家庭の両立をしながら、学校外での教育活動の推進も行なっています。
30代教員が「分岐点」と言われる理由

そもそもなぜ、30代がキャリアの分岐点なんでしょうか?

それは、役割・人間関係・体力の3つが、20代までと大きく変わってくる時期だからです。
役割の変化(プレイヤーからマネジメントへ)
20代のうちは、自分のクラスや授業をどう成立させるかが中心でした。
しかし30代になると、学年経営や校務分掌のリーダー的な役割を任されることが増えます。
自分のクラスさえ良ければよい、という発想では立ち行かなくなるのです。
「自分のクラスの平均点だけは高くする」
「自分の授業だけは充実させる」
これらは20代では十分に評価された姿勢です。
ただ30代以降は、学年全体や学校全体をどう底上げするかという視点が求められていきます。
校内のロールモデルが見つけにくくなる
20代の頃は、先輩やベテランの先生方の働き方を見て「あのようになりたい」「あのスキルを真似したい」と思える対象が校内にいたはずです。
ところが30代になると、自分の知識や実践も積み上がっていくことで、校内で参考になる存在が見えにくくなることがあります。
もちろん、お手本にする先生方がゼロというわけではありません。
しかし、自分のやりたい実践を高めていくためには、外の世界に一歩踏み出し、新しい人間関係を作っていくことも重要です。
日々変化する社会と学校教育の中で、「自分の先輩世代と同じやり方でいいのか?」と問い直す機会は、キャリアの分岐点として大切な時期となるのです。
▼この問い直しの考え方については、以下の記事も参考にどうぞ。
体力・健康面の転換期
早朝や放課後の補習、部活動指導、勤務時間外の教材研究など……。
20代と同じペースで仕事を続けると、心身の不調を引き起こすリスクが上がります。
30代も後半に差し掛かると、20代のようには心も身体も動けなくなってきます。
まだ体力のある30代のうちに「持続可能な働き方」を設計しておくことで、さらに年齢を重ねた40代の伸びしろを広げることができるでしょう。
ですから、環境の変化が大きい30代に働き方を見つめ直してみるのも大切な視点です。
30代でしておきたい9つのこと

ここからは、30代の先生方にぜひ取り組んでほしい9つの実践を紹介します。
① 自分の強みを決める
20代は「何でも経験する」が重要でした。
学級経営、部活動、分掌も多くのものを経験する。
そうすることで、教職の業務全体を把握するとともに、さまざまな視点から生徒の成長を見取る力が養われます。
しかし30代に入ったら、「自分は何で勝負するか」を決める時期に入ります。
私自身は、20代後半から30代前半にかけて関わった探究学習やキャリア教育が、自分の専門領域となりました。
最初は校務分掌で割り当てられただけの業務でしたが、深めていくうちに「これは自分の核になる」と感じるようになったのです。
基本業務は当たり前にこなし、学校をさらに発展させていくために、自分の強みを磨いて貢献をしていく。
このような強みを伸ばすと、仕事がもっと楽しくなります。
強みは「もともと得意だったこと」だけではありません。
与えられた仕事を深掘りした結果、見えてくる強みもあります。
など、ぜひ先生方もご自身の強みを考えてみてください。
▼自分の強みを言語化するワークは以下の記事で紹介しています。
② ミドルリーダーとしての視点を持つ
学年主任や分掌主任を任されるかどうかにかかわらず、ミドルリーダーとしての視点を意識し始めるのが30代です。
具体的には次のような問いを持ちます。
教員には、ミドルリーダー研修やマネジメント研修がほとんど用意されていません。
時が来て、管理職試験を勧められ管理職になる。
そのためプレイヤー視点のまま管理職となることも少なくありません。
だからこそ、20代までの「教科指導」「学級経営」とは別の軸として、自分で意識的に書籍などで学び始める必要があります。
また、管理職と意識的に話す機会を持つことも有効です。
「校長は今、どんな課題に向き合っているのか」を対話していくと、自分の担当業務の見え方も変わってきます。
③ 若手への支援を考える
近年では、新規採用の先生方の離職率が増えています。
東京都では2024(令和6)年度新採教員4237人のうち240人(5.7%)が1年以内に離職した。その約4割がメンタル面の不調など健康上の理由を挙げている。東京都の新採教員離職率は、20(令和2)年度以降、2.8%、4.2%、4.4%、4.9%、5.7%と上昇し続けている。
全国的にも同様の傾向がある。文部科学省の調査によれば、全国の新採教員の離職率は、21(令和3)年度が1.61%、22(令和4年)度が1.94%、23(令和5)年度が2.28%と上昇している。
教育新聞「新採教員に優しい学校への転換を 教員の早期離職問題」2025-05-08
新採の先生が精神的な理由として教職を去ってしまう理由の一つとして、業務の難しさや適切なサポート体制がないことが挙げられると考えています。
30代は、20代の若手から見て最も身近な先輩世代になります。
かどうかは、若手の定着に大きく影響します。
ミドルリーダーとしての小さな関わりが、若手の気晴らしになったり成功体験につながったりします。
ベテランになってからではなく、まだ若手の感覚を覚えている30代だからこそ、自然にできる支援があります。
④ 外との関係を作る(先進校・校外コミュニティ)
20代はすべてが新鮮で、校内のロールモデルから多くを学べました。
一方で30代以降は、校外に学びの機会を求める姿勢が大切になります。
理由はシンプルで、外の世界には校内では出会えない実践者がたくさんいるからです。
家庭ができると、気軽に動けないこともあります。
それでも、できる範囲から始めることが大切です。

私自身、ある先進校の視察で衝撃を受け、自分の授業観が大きく変わった経験があります。
校内に閉じていたら出会えなかった視点でした。
⑤ 教員以外の人脈を作る
校外に出ることに加え、教員以外の人脈をつくることも、30代の重要な投資です。
10年近く教員を続けていると思考の偏りが出てきます。
そこで、外の世界に出ることで学校内だけでは決して得られない視点を獲得できます。
また、よく教員は世間知らずと言われますが、外の世界に出ることはマイナスを補うだけではありません。
ニュースではネガティブな発信しかしませんが、現実の学校外の社会の方々は、教員という仕事をリスペクトしてくれていますし、一緒に何かをしたいとも考えてくれています。
そのような言葉に触れることは、自身の教育活動を後押ししてくれる存在となるでしょう。
外部の方との出会いきっかけは身近なところにあります。
私の場合、インターンシップを担当したことをきっかけに、企業の代表と継続的に話せる関係ができました。
学校の常識だけでは見えないキャリア観や働き方の発想に触れる機会となり、自分の教育観をアップデートすることにつながっています。
⑥ 理論の学び直しをする
20代は実践書を読みあさり、目の前の授業を回すための知識を吸収するのに適した時期です。
例えるならば、武器を手にいれる時期。
色々な実践を真似して自分なりに試してみることで、土台を作り上げていきます。
一方、30代にもなると、ある程度自分の授業や担任としての型が出来上がってきます。
このようなとき、新しい実践を試みようと考えても20代のように闇雲に実施することはお勧めしません。
なぜなら、そこには実践の背景となる理論や想いがないからです。
教育書コーナーでは、さまざまな先生方の実践本が溢れています。
その実践は、その先生の学びの中で生み出された想いや積み重ねてきた経験など、見えない背景があります。
また、目の前の生徒も異なります。
20代の頃は「とにかく試してみる」でよかった実践も、中堅となった30代では思いつきで実践するわけにはいきません。
それでは、目の前の生徒に効果のある教育実践にならないからです。
自己調整学習、反転学習、ジグソー法、アプリの活用など、さまざまな取り組みが紹介されていますが、表面だけ真似して、授業の中身がないということはよくあります。
だからこそ、30代はしっかり理論を学び直すことが大切です。
学習指導要領は10年ごとに改訂されます。
また、教育心理学や認知科学の知見も日進月歩で更新されています。
このような理論をしっかり学び直すことで、自分の中で根拠を持って新しい取り組みを始める。
これが年数を重ねた教員の新しい取り組みへのスタンスであると考えます。
また、20代に必死で蓄えた経験が、理論と結びつくことで初めて他の場面にも応用可能な知見にもなります。
私自身は、教職大学院に通えたことが大きな転機でした。
当時は「実践と理論を行き来する余裕」が初めてできた時期で、これまでの実践に意味づけができるようになりました。
大学院に通うのが難しくても、専門書や論文を体系的に読み直す、教育学部が実施する教員向け研修会に参加するなど、理論に立ち戻る時間を意識的に作ることが大切です。
実践は目の前の学び、理論はそれを俯瞰してみるイメージです。

そうすることで、これまで見えていなかったものが見えるようになるのです。
理論を学ぶことを通して、さらにより良い実践を進めていくことができます。
理論と実践の両方を獲得していくことが、30代からの学びであると考えています。
⑦ アウトプットの場を準備する
学んだ知識や実践は、アウトプットすることで定着し、自分の言葉になります。
30代は、自分の実践を発信する場を持ち始める時期にしてみてください。
アウトプットには、「自分の実践を言語化する」という大きな副産物があります。
普段は感覚で行っていることを、言葉にすることで再現性が高まり、後輩への伝達や研修での共有にも使えるようになります。
最初は小さな発信からで構いません。「読んでくれる人が一人いる」だけで、続ける動機になります。

私自身もネットだけでなく、リアルな場面でも積極的にアウトプットをするようにしています。
⑧ 体力維持の習慣をつくる
体力維持の習慣も30代のうちに整えておきたいものの一つです。
年齢を重ねるごとに体力は落ちていきます。
ですから年々運動習慣を定着させるハードルは上がっていきます。
運動習慣のない方は、まだ体力がある30代のうちに「自分に合う運動」を見つけ、習慣化しておくと、その後の長い教員生活を支えてくれます。
精神科医の樺沢紫苑氏は、著書『三つの幸福』のなかで、心の健康を支える「セロトニン的幸福」の重要性を指摘しています。
セロトニンは、朝日を浴びる・適度な運動をする・リズム運動を行うといった習慣で分泌が促されるとされ、心の安定に大きく関わります。
私自身、30代に入ってから疲労の蓄積が抜けにくくなり、心身ともに不調を感じる時期がありました。
朝の運動習慣を取り入れたことで、明らかに回復力が戻ってきた経験があります。
教員は気づかないうちに精神的な負荷を抱えがちな仕事です。
精神疾患による休職も、年々数を増やしています。
体力と精神の土台を、自分でメンテナンスする習慣を持ちましょう。
そうすることで、新しい学びにも挑戦し続けることができます。
⑨ 働き方の軸を決める
30代は、「教員という仕事と自分の人生をどう両立させるか」を考える時期でもあります。
- 子育てとの両立
- プライベートの充実
- 趣味や副次的な学び
「教員だけの自分」では、人間としての魅力が広がりません。
生徒に話せる経験や視点も、職業人としての顔だけでは限られてしまいます。
教員という仕事を続けるからこそ、仕事以外の時間で自分を耕しておくこと。
これが、長い目で見て授業や生徒との関わりにも還元されていきます。
自分が大切にしたい価値を言語化し、それに沿った働き方を選び取る。
20代のように「与えられたものを全部こなす」ではなく、取捨選択する勇気を持つのが30代です。
30代の学びを止めないために

9つも一気に取り組むのは難しそうです……。

全部を一度にやる必要はありません。
自分の今の状況に合うものから、ひとつずつ始めてみましょう。
小さく始める/継続する
9つすべてを完璧にやろうとすると、必ず挫折します。
まずは「強みを言語化してみる」「月1冊だけ理論書を読む」「朝に10分だけ歩いてみる」など、小さなアクションから始めることが大切です。
小さく始めて続けることで、「自分はやれている」という感覚が積み重なります。
これが、次の一歩への原動力になります。
学校外に身を置く時間を確保する
30代は、放っておくと校内の業務だけで時間が埋まっていきます。
特に朝から晩まで業務に追われていると、学校の中の世界に閉じこもりがちです。
意識的に「外に身を置く時間」をスケジュールに入れておくことが、視野を保つコツです。
私自身は、定期的に社長たちの勉強会に参加することでキャリア教育の感覚を更新しています。
研究会や勉強会、他校視察など、案内があった場合には予定がなければその場で即決してしまう。
カレンダーに先に予定を入れてしまうのが続けるための工夫です。
まとめ:30代を「土台を広げ、より強い建物を創造する10年」にしよう
今回は、「30代の教員がしておきたい9つの実践」を紹介しました。
9つの実践は以下のとおりです。
9つすべてを一度にやる必要はありません。
今の自分に合うものから、小さく始めれば十分です。
20代の「基礎固め」の先には、30代の「土台を広げる10年」があります。
そして土台が広がれば、より高度な建物を築き上げることができます。
そして、それらは学校のなかで深めるだけでなく、外の世界からも得ること。
そのために自分自身の学びの世界を広げていくこと。
それが、今後の充実した教員生活につながると信じています。

今回の記事が、先生方のキャリア設計のきっかけになれば嬉しいです。
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