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【高校生版】「なぜ学ぶのか?」学びへの動機づけと本当に学びたいことを見つけよう!

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生徒さん

学校の勉強を進めるのに、なかなか意味が見出せません…。

きょういち

目の前の学習の動機づけって難しいですよね。

 

誰しもが一度は考えたことがある「なぜ勉強しなければならないのか?」

今回の記事は、「なぜ学ぶのか?」シリーズ第2弾です。

 

まず初めに前提をお伝えしておきます。

「なぜ学ぶのか?」に答えはありません。

そのため、みなさん自身が納得できる理由を探していく必要があるのです。

 

第1弾の記事を未読の方は、ぜひ先に読んでみてから本記事をお読みください。

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その上で今回は、なぜ学ぶのかを考えるためのフレームワークとして「動機づけ」を紹介します。

学びに向かう場面では、動機づけを意識することで学ぶ理由を見出していくことができます。

 

特に

  • 目の前の学びに意味を持たせること
  • そもそも学びたいと思えるものを学ぶこと

この2つに焦点を当てて解説をしていきます。

きょういち

ぜひ「なぜ学ぶのか?」に対する納得解の一つにしてみてください。

 

この記事を読んでほしい方
  • 学校の学習へのモチベーションを高めたい高校生
  • 「なぜ勉強しなければならないのか」疑問を持っている高校生
  • 楽しんで学び続ける方法を知りたい高校生
筆者の経歴

高校教員として、数学を10年以上教えています。

内容をただ教え込むのではなく、「数学の学び方を教える」をモットーに授業を実施しています。

生徒が主体的かつ協働的に学ぶ授業スタイルを目指し、「なぜ数学を学ぶのか」を意識した授業を心がけている。

「なぜ学ぶのか」のヒントは、学習への動機づけ

生徒さん

なんで私たちは勉強をしなければならいのでしょう?

きょういち

確かに誰もが一度は考えたことがある疑問ですよね。

 

小学校に入学してからというもの、目の前の学習をこなす毎日が何年も続いています。

そのような中で、「自分は何のために学習をしているだろうか」と学習に取り組む意味が分からなくなってしまう人は多いものです。

目的が見つからないと、人はなかなか物事に取り組むことができません。

「なぜ学ぶのか」つまり学習の動機を明確にすることで、目の前の学習に意味を持たせることができるのです。

また、本当に自分がやりたいこと、学びたいことも見えてきます。

 

学びは学校の勉強だけではありません。

自分の人生をよりよくする。

そして自由に生きていくためには、生涯学び続ける姿勢が必要です。

 

きょういち

そのために「なぜ学ぶのか」について、動機づけの視点から探ってみましょう!

 

動機づけを考えるときに参考になる理論「有機的統合理論」とは?

生徒さん

動機づけって「内発的動機づけ」とか「外発的動機づけ」とかのことですか?

きょういち

そうです!この記事ではもう少し細かく考えていきましょう。

 

外発的動機づけと聞くと、人から与えられる動機で、報酬や罰のイメージがあるかもしれません。

一方で内発的動機づけは、自身の興味・関心から湧き出てくるものというイメージでしょうか。

このように考えると、内発的動機づけが良いもので、外発的動機づけは悪いものと認識されることが多いです。

 

でも実はそんなことはありません。

 

誰しもが多くの場面で、外発的動機づけをもとに行動しています。

  • 仕事ができないと思われたくないから、スキルを磨こう。
  • 怒られたくないから今日は早めに帰ろう。
  • 大手企業に就職したいから、このあたりの大学を目指そう。

などです。

自身の行動を後押ししてくれるのであれば、その動機が他者から与えられるものであっても別に構わないのです。

ですから、「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」を良い悪いの二項対立で考えず、状況によってバランスよく使い分けることが大切です。

きょういち

そこで紹介するのが「有機的統合理論」です。

 

有機的統合理論とは?

生徒さん

「ゆうきてきとうごうりろん??」難しそうな名前です。

きょういち

心配しなくても大丈夫!

分かりやすく説明します。

みなさんの「なぜ学ぶのか」を解決する一つの手段になるはずです。

 

有機的統合理論とは、内発的動機づけと外発的動機づけを二項対立でとらえるのではなく、2つの関係を連続線上に位置づけた考え方です。

そして、個人の自律性によって動機づけの質が変化したり、複数の段階を持ち合わせていたりすると考えるのです。

有機的統合理論
有機的統合理論 Ryan & Deci (2000), FIG.1(p.61)をもとに筆者作成

上図のように、外発的動機づけを「外的調整」「取り入れ的調整」「同一化的調整」「統合的調整」の4つに細分化します。

これらの4つに「無動機づけ」「内発的動機づけ」を含めた計6つの状態が連続していて、個の自律性によって段階的に変化する、また複数持ち合わせていると考えるのです。

 

有機的統合理論の具体例を見てみよう

具体的な例を見てみましょう。

自律の段階学習者の状態学習における例
無動機づけ動機づけがない状態全くやる気が起きない。
外的調整報酬や罰などによって取り組んでいる状態先生に怒鳴られるから宿題を提出しよう。
取り入れ的調整外部の期待や要請によって取り組んでいる状態みんなの前で恥をかきたくないから、予習しておこう。
同一化的調整外部からの期待や要請に、自分でも価値を認めてとり組んでいる状態親や先生が言うように確かに大学進学をしておいた方が、将来の役に立ちそうだから勉強しよう。
統合的調整外部の期待や要請を自身の他の側面と有機的に統合して行動している状態将来は食品開発に携わりたいから、大学に進学して化学分野をより深く学びたい。そのための大学進学に向けた学習に取り組もう。
内発的動機づけ興味・楽しさによって行動している状態数学が純粋に楽しく、自分で先の内容まで学習している。

 

生徒さん

より自律の段階が高い方がよいわけですよね?

きょういち

でも初めから高い自律性を持っている人はいません。

 

初めは親や学校の先生が勉強するように言うから勉強をしていた。

でも勉強をした結果クラスで上位になれたことで嬉しくなった。

そして学習を続けているうちに数学や情報に興味をもち、情報工学について学びたいと思うようになった。

 

このように段々と自律の段階は上がっていくものなのです。

きょういち

高校生の時期は、発達段階としても自律性が高まる時期です。

 

「なぜ学ぶのか?」を解消するためのヒント

きょういち

ここからは有機的統合理論を踏まえて、「なぜ学ぶのか?」について考えてみましょう!

ここで紹介する考え方は以下の2つです。

「なぜ学ぶのか?」へのヒント
  1. 自律の段階に応じた目的を目の前の学びにつける
  2. 自律の段階が高い学びを見つける

自律の段階に応じた目的を目の前の学びにつける

きょういち

一つ目は、目の前の学習に自分が納得できる理由や目的をつけること!

生徒さん

まずは自分の現状に合わせて目的を持たせるのですね。

 

まずは先ほどの有機的統合理論をもとに自分の立ち位置を把握してみましょう。

ここまでの知識を踏まえれば「怒られるから」「純粋に数学が好きだから」という0か100かの議論にはならないはずです。

人によって、さらに教科・科目などの学びの対象によって自律の段階は異なります。

どの段階の動機づけでもよいので、自分の現在の状況に応じた理由や目的を目の前の学習に添えてみましょう。

 

生徒さん

その後、自律の段階を上げていくためには、どのようにすればよいでしょうか?

きょういち

現在の動機づけに従って学び続けるのです。

 

動機づけは言わばガソリンのようなものです。

モチベーションを保つためにどの段階でもよいから動機づけを持つことが大切です。

ガソリンがあるうちは、しっかり前に進めます。

次第に次の目的地へと向かえるでしょう。

 

学びの必要性や学ぶ楽しさは学んだ人にしかわからない。

これはよく言われることです。

きょういち

後ろめたさを持たず、自分勝手な目的で取り組んでみましょう。

生徒さん

目の前の学習をなんとか頑張れそうな気がします!

 

自律の段階が高い学びを見つける

生徒さん

そもそも学ぶ意味を見つけられない場合はどうしましょう。

受験にも使わないし、単位さえ落とさなければ怒られないし…。

きょういち

そもそも今の学びに意味を感じないなら、逆に上位の自律の段階に対応する学びを自分自身で見つけてみましょう!

 

学校の勉強をしなくても怒られないし、見栄を張ろうとも思わない。

大学に進学する予定もない。

このような場合、学校の勉強に無理やり動機づけをするのは苦しいですよね。

 

そのようなときは、自律の段階が高い学びを自ら発見していくことをオススメします。

きょういち

つまり探究学習です!

 

教科学習と探究学習の違いとは?

「学校で行う教科の学び」と「探究的な学び」の大きな違いは

誰かが決めた枠の中で学ぶ のか

自分で学びたいものを発見して学ぶ のか

ということです。

 

教科とはそもそも国が勝手に決めた枠に過ぎません。

例えば、

  • 国語・数学・英語などの教科の枠。
  • 科目であれば、数学ⅠAⅡBⅢCなどの枠。
  • 歴史は古い年代から学ぶなどの教科書の配列。

 

では、なぜこのように枠が決められているのか。

 

それは大人が

「似たような内容をまとめた方が頭に入りやすいよね」

「この順序でも学ぶとつながりが意識しやすいし効率もよいですよ」

と考えてつくっているのです。

 

例えば

「因数分解やらないと2次方程式は解けないよね」という具合です。

 

学校の教科の学びを図にすると、以下のようになります。

順序立てた学び図
生徒さん

確かに順番にやった方が理解はできそう。

きょういち

授業として知識を与えたり基礎的な内容を学んだりするには、枠組みや順序化されている方が分かりやすいですよね。

ただやはり弱点もあります。

 

体系化された学びのデメリット

順序化された学び、枠組みが与えられた学びは、効率が良い反面デメリットもあります。

 

それは

  • 答えのない問いに向かう力が育ちにくい。
  • 目の前の学びに意味を感じにくい。

などです。

 

すでに答えが分かっており、先人の知識を効率よく獲得するのが体系化された学びです。

もちろん、これはメリットでもあり必要なことでもあります。

しかしこれだけでは、これからの社会で必要とされている答えのない問いに向かう力が育ちにくいのです。

また、与えられた内容ですので自身の興味・関心とはかけ離れており、いま行っている学習の意味を感じにくいのです。

 

生徒さん

確かに興味のない教科もあったりして…。

内発的な動機づけには程遠いかも。

きょういち

そこで探究的な学びのスタイルの出番です!

 

探究的な学びとは?

一方で探究的な学びは手順が異なります。

探究的な学びは、自身のやりたいことや問いを解決するために必要な内容を学ぶのです。

 

例えば以下のような流れです。

探究的な学びの例

「地元のお祭りの来場者数を増やしたい」というRQ(リサーチクエスチョン)を立てた。

  • 集客のためのHPを作成しようと思うと、Webデザインの知識やHTML・CSSなどの知識が必要になった。
  • Webではなかなか検索されないので、まずは近隣の地域からの集客を増やすべくチラシを作ろうと考えた。そのために広告デザインを学んだ。
  • 「そもそもお祭りのコンテンツは魅力的なのか」という疑問が生じ、過去に来場した人にアンケートを実施し分析することにした。そのためにデータの分析や統計学の学びが必要になった。

 

このように、いま自分が解決したい問いを洗い出し、そのために必要な学びを追いかけていく。

これらは自律の段階で言えば「統合的調整」「内発的動機づけ」のような高い位置で学びを続けている状態です。

 

これらの学びは、学校の学習外の学びであることの方が多いでしょう。

しかし、学びの中で学校での学習が生きてくる場面があるのです。

探究的な学び図

 

探究的な学びを進めることで自身でどんどん学びが発展していく。

そして授業で習う頃には、すでに自身で学んでいるため細かい内容を理解するくらいの状態になっている。

このくらいの感覚が探究的な学びの理想になるのです。

 

生徒さん

自分の好きなこと・やりたいことであれば、どんどん学べそうですね!

きょういち

自分の好きなことでも、誰かに価値を与えることができれば、それは立派な社会課題の解決になります。

そのために、あまり難しく考えず学びを深めていきましょう!

 

探究的な学びを自分自身で見つけよう!

現在は高校でも探究学習が推進されています。

例えば

  • 学校がテーマを用意して、その範囲でプロジェクトを進める
  • 自由に自分がやりたいことを突き詰められる個人探究
  • 地元の活性化や課題解決を目的としてチームで行うもの
  • 大学と連携して学術的な研究を行っていく

など、高校によって様々な探究学習のパターンがあります。

 

しかし、自分自身でやりたいことを突き詰めていく。

これこそが本来の探究であり、学びの楽しさでもあります。

きょういち

学校の探究活動があまり自由でない場合には、学校で探究学習の手法を学びつつ、自分でやりたいことを探してみましょう。

 

まとめ〜動機づけと探究的な学びで「なぜ学ぶのか?」への疑問を解消しよう〜

今回の記事では、「なぜ学ぶのか?」のテーマをもとに、動機づけの種類と探究的な学びについて紹介してきました。

 

目の前の学習において「なぜ学ぶのか?」という疑問が出てくるのは、学びに向かうための動機が弱いことが考えられます。

この学習への動機を見つけていくためには、動機づけを「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」の二項対立で考えるのではなく、有機的統合理論を用いて段階的に捉えることが大切でした。

自律の段階学習者の状態学習における例
無動機づけ動機づけがない状態全くやる気が起きない。
外的調整報酬や罰などによって取り組んでいる状態先生に怒鳴られるから宿題を提出しよう。
取り入れ的調整外部の期待や要請によって取り組んでいる状態みんなの前で恥をかきたくないから、予習しておこう。
同一化的調整外部からの期待や要請に、自分でも価値を認めてとり組んでいる状態親や先生が言うように確かに大学進学をしておいた方が、将来の役に立ちそうだから勉強しよう。
統合的調整外部の期待や要請を自身の他の側面と有機的に統合して行動している状態将来は食品開発に携わりたいから、大学に進学して化学分野をより深く学びたい。そのための大学進学に向けた学習に取り組もう。
内発的動機づけ興味・楽しさによって行動している状態数学が純粋に楽しく、自分で先の内容まで学習している。

 

生徒さん

誰しも初めから自律の段階が高いわけではなく、だんだんと高めていけばよかったのでしたね。

 

この自律の段階を活用して「なぜ学ぶのか?」を解消するヒントも2つ紹介しました。

「なぜ学ぶのか?」へのヒント
  1. 自律の段階に応じた目的を目の前の学びにつける
  2. 自律の段階が高い学びを見つける
きょういち

自律の段階は人それぞれ。

どの段階でも恥ずかしいことはありませんから、まずは目の前の学習に動機をつけてみましょう。

生徒さん

学んでいるうちに次の段階に移っていけばよいのですね。

きょういち

それでも目の前の学習への意味づけが難しければ、探究的な学びの実施です!

生徒さん

自分のやりたいこと・好きなことから学びを生み出していく方法ですね。

 

2022年の新課程(2019年から先行実施)から高校でも探究学習が始まりました。

ただしっかりと取り組んでいる学校もあれば、なかなか取り組めていない学校もあります。

 

しかし心配をする必要はありません。

本来の探究学習は、自分で学びを創るもの。

そして

高校生の発達段階は自律性が高まる時期です。

 

ぜひ与えられる学びから、自分自身で学びを創る面白さに移行してみてください。

それができれば「なぜ学ぶのか?」の疑問に納得解を持たせられるでしょう。

きょういち

今回の記事が、みなさんの学びに向かう力に貢献できれば嬉しいです。

 

▼今回の記事に興味を持ってくださった方は、こちらに記事もどうぞ!

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参考・引用文献
  • Richard M. Ryan and Edward L. Deci(2000).Intrinsic and Extrinsic Motivations: Classic Definitions and New Directions. Contemporary Educational Psychology 25, 54–67

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