生徒の学力向上のために頑張っていますね。
でも、それでは先生も生徒も忙しすぎて大変です。
生徒も余裕がないと学力を定着させることが難しいですよ。
学校内では、様々なテストがあります。
- 定期テスト
- 実力テスト
- 確認テスト
- 漢字テスト
- 古文単語テスト
- 英単語テスト
- 文法テスト などなど…
教育現場では、テストをやればやるだけ生徒の学力向上につながると思われがちです。
しかし、それは本当でしょうか。
「義務感で実施するテスト」や「無理やりやらされるテスト」で、果たして成果は得られるのでしょうか。
今回は、
学校におけるテストの意義について
効果的なテストの実施方法について
考えていきます。
学年で主の数学教員として学習方針を決定し、試験の在り方についての実践を継続中。
最近では、他教科と連携し、所属学年において無駄な単語テストを廃止、無駄な宿題も廃止することに。
学びに向かう力の育成を目標に「主体的・対話的で深い学び」を実践することで相乗効果も生まれ、生徒がより難易度の高い大学に積極的に挑戦し、例年よりも高い進学実績となる。
目次
テストについて、現状の課題を考える
まず、多くの学校で起きているであろう現状について、確認しましょう。
私がこれまで勤務してきた学校も例外ではない現状です。
① テストが多すぎないか
最初は、テストが多すぎるということです。
初めに挙げたように、学校現場では
- 定期テスト
- 実力テスト
- 確認テスト
- 古文単語テスト
- 英単語テスト
- 文法テスト
など多くのテストが行われています。
特に国語・数学・英語では、主要科目なだけあり、それぞれの先生が熱心にテストを行います。
国語は、漢字テスト、古文単語テスト、暗唱テストなど…。
英語は、単語テスト、文法テスト、Speakingテストなど…。
数学は、単位数が多いため毎時間の復習豆テストなど…。
さらに、以前勤めていた学校では、合格しなかった生徒は昼休みや放課後返上で追試、追試、追試も珍しくありませんでした。
これでは、生徒が疲弊してしまい、やっつけでテストに臨むか、その場しのぎの一夜漬けに終わってしまうでしょう。
さらに、先生方はこれらすべてのテストを成績に入れようとしますから、業務量も膨大です。
② 定期試験は本当に必要か
次に定期試験についてです。
ほとんどの学校が中間試験や期末試験などの定期考査を行なっていると思います。
中間試験は5教科、期末試験には実技系教科を入れる日程が多いでしょう。
この定期試験、実は「やらなければならない」という固定観念に縛られているだけで法律では定まっていないのです。
文科省HPより「平成29年8月4日 学校における働き方改革特別部会」
法令等で学校に義務付けられている業務等(一覧)
上記リンクの資料によれば、学習関係で学校に義務付けられているものは、
の記載しかありません。
このように、多くの学校が「何となく定期試験はやるもの」という感覚で実施しており、定期試験が本来の目的である「学力の定着」ではなく、成績をつけるための手段となっているのです。
この現状によって、複数の課題が見えてきます。
などです。
定期試験を廃止した千代田区立麹町中学校の工藤校長も以下のように述べています。
一夜漬けの学習では、「テストの点数を取る」という目的においては有効ですが、学習成果を持続的に維持する上では効果的とは言えません。テストが終わったら、かなりの部分は忘れてしまうからです。そうしたプロセスを経て獲得した点数・評価は、その生徒にとっての「瞬間最大風速」にすぎず、それをもって成績をつけたり、学力が付いていると判断することは、適切な評価とは言えません。
ITmediaビジネスオンライン
このように、現在の定期試験は、教員が評価をつけるためのテストであって、本来の目的である生徒の学力を向上させるためのテストになっていないのです。
誰のためのテストか
「① テストが多すぎないか」「② 定期試験は必要か」で見たきたように、
その根本には、
誰のためのテストか
が抜けているのです。
教師が評定をつけるために行っている。
たくさん単語テストを行って、生徒のために頑張っている自分。
となってはいけないのです。
目的と手段を混同せず、生徒の学力向上につながるテストを考えなければなりません。
有意義なテストにするための考え方と方法
常識を疑うことが大切で、闇雲にテストを実施するだけというのもダメなんですね。
その通りです。
テストを行うことが悪いのではなく、そのテストを行う意味を考えていく事が重要です。
続いて、先ほど述べた課題についてのアプローチを考えていきましょう。
目的と手段を区別し、上位目標を設定する
テストを実施する上で一番重要な事が、
目的と手段を区別する
という事です。
これまで述べたように、「テストをすること自体が目的になっていないか」を改めて見つめ直す事が大切です。
単語テストを頻繁に行ったり、過度に追試をしたりして生徒・教師ともに疲弊していては本末転倒。
目的が「語彙力を増やすこと」であれば、一夜漬けになるような単語テストは意味がありません。
授業の中で学力を身に付けさせる
また、「そもそも単語テストが必要か」という視点も持ちましょう。
「語彙力を増やしてほしい」のであれば、何も単語テストが最適解ではありません。
実際、単語だけ覚えても意味がなく、それらを活用できるようにすることが大事なわけです。
つまり、上位目標を考えるのです。
単語を使って自身の意見を伝える。
長文読解ができるようになる。
語彙力があることで英文が聞き取りやすくなる。
このような力を身に付けさせたいのなら、授業内で生徒同士が英語でコミュニケーションをとる時間を増やしたり、面白い文学を読む時間をとったりすれば良いのです。
そうすれば、自然と語彙力が増えるのではないでしょうか。
所属学年でも単語テストを廃止しましたが、生徒の共通テストの結果は全く下がりませんでした。
上位目標を設定することで、本来の学力をつけさせるとともに下位の目標も達成できるのです。
豆テストは成績に入れない
それでも単語テストや復習テストを実施したい場面はあるかもしれません。
生徒の学力を高めるというよりは、教員の診断的評価や形成的評価に利用したいというものです。
つまり、生徒の定着の度合いを教員側が知り、授業に生かしていくというものです。
このような場合には、テスト結果を成績に入れないことが良いでしょう。
目標が、生徒の成績をつけることになってしまうからです。
授業改善が目的であれば成績をつける必要はありませんし、学力定着は過度な豆テストでは起こりません。
上記の「診断的評価」や「形成的評価」って何?という方は、評価についての記事がありますので参考にしてください。
単元テストを導入しよう
次に、定期試験の課題について考えていきましょう。
課題の一つとして、「試験期間に詰め込んで学習内容が残らない」というものがありました。
しかし、定期試験は学校で設定されているものですから、麹町中のように校長の高いリーダシップがない限り廃止は難しいでしょう。
そこで、このような問題を解決するために、私自身は「単元テスト」を導入しています。
各単元が終わるとともに授業内で単元テストを行うのです。
これは定着を図るためのテストです。
高校数学は、学習量が多く中学校までのように授業内で同じ内容を何度も扱う事ができません。
ですから、単元テストで明らかにした自身の課題をもとに定期試験(単元テストで一度扱った範囲)に臨むのです。
そうすることで、
というメリットがあります。
もちろん、単元テストは成績に入れない事が理想です。
現時点での自身の学力定着の度合いを知り、振り返りにつなげることが目的だからです。
成績に入れなければ、採点の必要もありません。
生徒が双方向に採点をし、記述の不備を指摘するなどの活動を行えば、採点者側の視点に立つことで学びも深まります。
実力テストが学力向上につながる
成績に入れない単元テストの導入について、このような意見もあるかもしれません。
- テストを成績に入れないと、なかなか生徒がやる気を出さない
- 成績をつけるテストが定期試験だけというのは、逆に生徒にとってチャンスがない
そのような場合には、無理に成績に入れない単元テストを行う必要はありません。
その代わり実力テストを重視してみましょう。
実力テストとは、出題範囲を指定しないテストのことです。
これまで学習した内容全てが試験範囲となるわけですから、一夜漬けで対応することはできず、日々の学習が欠かせません。
高校では、夏休み明けや冬休み明けなどに設定されている学校も多いでしょう。
このような実力テストを成績のメインに位置付け、定期試験は単元テスト扱いにしてしまうのも一つの手です。
単元が終わったら単元テストを行う。
定期試験の時期は、単元テストを定期試験の日に当てる。
そして、実力テストを最重要のテストと位置付けるのです。
そうすることで、授業内での単元テストの数を抑えながら、単元テストで定着を確認し、実力テストで学習の成果を発揮するという流れができます。
このとき、単元テストを成績に入れるのであれば、実力テストと単元テスト(定期試験を含む)の割合を4:1などに設定するのです。
これにより、目先の目標にはなりますが、成績という生徒の目標を持たせながら、一夜漬けなどの短期的な学力成果を防ぎ、定期試験を意味のあるものにすることができるのではないでしょうか。
目的を生徒に伝えた上で実施しよう
以上のように、目的を達成するための試験の方法はいくらでもあります。
まずは、教員自体が、上位目標に従って生徒の力になる試験を実施していくことが重要です。
その上で、
生徒にこちらの意図をきちんと伝える
ということです。
成績をどのようにつけるのか、何のために試験を行うのか。
教員が評価の規準を隠さずに、生徒にしっかり伝えることが大切です。
意図が伝われば、生徒も目的と手段を混同せずに、日々の学習に取り組んだ上で試験に臨むことができるのです。
授業開きの際に、しっかり伝えておきたいですね。
まとめ:上位目標をもとにテストを実施しよう
今回は、無駄なテストを廃止して、本来の目的である生徒の学力を高めるためのテストの在り方について紹介しました。
有意義なテストを実施するためには、
をまず考えましょう。
その上で、
目標を達成するための上位目標を考える
ことです。
本来身に付けさせたい力を上位目標として立てることで、自動的に下位目標は達成されます。
そして、その手段として
などが考えられます。
その他にも先生方それぞれの手段があるでしょう。
生徒の学力を付けるために、今一度テストの在り方について考えてみるのはいかがでしょうか。
単語テストの採点に入力、復習テストを作った後に定期試験の準備を…。
単語テストの追試もさせようかなぁ…。
あ〜忙しい〜(~_~;)