
ただ書かせるだけではもったいないですよね。
振り返りシートを”より効果的なツールにするためのポイント”を一緒に考えてみましょう!
「毎回の授業で振り返りシートを書かせてはいるけれど、正直、活用しきれていない……」
そんなモヤモヤを抱えている先生も多いのではないでしょうか。
何となく振り返りを書かせていると
「今日は難しかった」
「復習しておく」
など、あまり効果的と言えない文章が目立ってきます。
そこで今回は、振り返りシートをただの“感想タイム”で終わらせず、学びを深め、次の授業や家庭学習にもつながるものにするためのポイントを7つ紹介していきます。
高校の数学教員として10年以上授業を行っています。
「主体的・対話的で深い学び」を目指す授業を実践し、それらをいかに評価するか研究中。
実施する授業では、「ルーブリック評価」「振り返りシート」「生徒相互評価」などを導入し、学力テストのみに依存しない「学びに向かう力」の育成に向けた評価実践を継続中。
目次
振り返りシートを意味あるものにしよう
近年、振り返りシートの活用が学校現場で広がっています。
一方で、「そんなの時間の無駄じゃない?」という声があるのも事実です。
しかし、正しく活用すれば、振り返りシートは生徒の学びを深める非常に有効なツールになります。
とはいえ、
「管理職にやるよう言われたから」
「学校全体でやることになったから」
といった理由でとりあえず書かせているだけでは、本来の効果は得られません。

ここからは、生徒の学びを促進させるための「振り返りシート活用ポイント」を紹介します。
①目的を明確にして「感想」ではなく「学び」を書かせる

時間をとっても、次の学習につながる記述が見られないことも多くて…。
振り返りシートをとりあえず書かせているだけだと、以下のようなことがよく起こります。
「楽しかった」「わかりやすかった」「次は頑張りたい」のような感想しか見られない。
このような「ただの感想」だけでは、学びは深まりません。
大切なのは、授業で得た知識や気づき、自分の学習に対する理解や課題を言語化することです。
書き手自身の思考を“メタ認知”することができれば、学びの質も高まっていきます。
なぜ振り返りを書くのかを明確にすることで、「とりあえず何か書いておけばいいや」が少なくなります。
自分で上手くまとめられない場合には、授業者が本時の取り組みの中で押さえて欲しいことを伝えることも有効です。
ただし、すべてを教員が提示しすぎると、生徒のメタ認知力が育ちません。
自由記述欄も用意することで、生徒の思考・表現の幅を持たせましょう。
②「最後に書く」の固定観念を捨てる

演習や解説に時間が取られて、結局振り返りを書かせる時間が取れないこともあって…。
「授業の最後に5分時間を取ろう!」と思っても、解説が長引いてしまって結局時間が取れなかった。
そのような経験をされた先生方も多いですよね。
「振り返り」=「本時のまとめ」
というイメージを持つと、何となく振り返りを最後に書かせてしまいがちです。
しかし、生徒の学びは50分の授業の中の様々な場面で起こります。
”学び”や”気づき”、”つまずき”が生じた段階でその都度ワークシートに記入ができるように準備をしておきましょう。
そうすることで、最後に「何か書かなければ」ということが起こりませんので、生徒の記述の質が高まります。
学習を効果的・効率的に進めるための「工夫」や「方法」のこと。
例えば、「問題を関連づけてネットワーク化するとよい」などがあります。
授業内でうまく思考ができている生徒は、よい学習方略を持っていることが多いです。
それらを対話的・協働的な学びの中で共有し、振り返りシートで自身のものとして獲得していくことが大事だと考えています。
また、「授業内に終わらせる」ことで“宿題にしない”のもポイントです。
生徒は帰宅してからもやることが多いですし、時間が経過することで振り返りの質が下がります。
そのためにも「書いておきたいと思ったことが生まれたらその場で書く」習慣を定着させていきましょう。

個人で学びを得られる瞬間は異なります。
各自のタイミングで自身の学びを言語化できる振り返りシートにしましょう。
③生徒が「後で活用できる」形にする
生徒にとっての振り返りシートシートの役割は、大きく2つあると考えています。

振り返りシートは、学んだことを言語化するだけではありません。
「記録」と「再生」の両面を持ち合わせているのです。
振り返りは、「書いたら終わり」ではもったいないです。
振り返りは、テスト前の見直しや、次の学習の指針、自分で学習計画を立てる際のヒントにもなり得ます。
心理学用語で、前の学習が後の学習に影響を及ぼすことを言います。
転移には「正の転移」と「負の転移」があり、振り返りシートが「正の転移」の補助になるよう心がけています。

①の「目的を明確にする」と合わせて生徒に伝えることで、授業外でも使えるサポートツールになるのですね!
④単元を見通して、学びの軌跡を見せる

毎時間ごとの学習をメタ認知させるだけでなく、単元全体の変化も見取れるようにするのも効果的です。
振り返りを行う場合、その時間の学習で得たこと振り返るのが一般的です。
それらをワンランク上げて、ポートフォリオにしてみましょう。
振り返りシートをポートフォリオとして一枚紙にまとめておけば、学習の変化を見ることができますし、単元を通しての振り返りもしやすくなります。
単発の振り返りでは見えなかった成長が、時間とともに学びがどう深まったのかを可視化することで、中期的なメタ認知を促すこともできます。
⑤形成的評価に活用する

振り返りシートは生徒のためのものだけではありません。
教員も自身の振り返りに活用しましょう!
振り返りシートは、生徒の学びを可視化するツールです。
生徒が自身の学習に利用するのはもちろん、それらをもとに教員が生徒の学びの現在地を把握することもできます。
生徒の学びの経過を見ることで、個別に支援をしたり、声かけの内容を考えたりすることができます。
また、自身の授業計画を見直し、より効果的な学習内容に調整することもできます。
このように振り返りシートを活用することで、生徒と自身の両方の形成的評価に活用していくことで、振り返りシートの活用幅はもっと広がります。
⑥デジタル化して保存・活用する

前項「⑤形成的評価に活用する」をもう少し長期スパンで考えましょう。
中学校高校では、学年持ち上がりを基本としながらも、毎年同じ学習内容を教えることが多いです。
例え同じ教科書や問題集を使用していたとしても、全く同じ授業をしていたのでは教員としての成長はありません。
年度が変われば、授業で関わる生徒も変わります。
しかし、より効果的に学習内容を習得してもらうために、教員の自己研鑽は欠かせません。
そこで、生徒の振り返りをデジタル化することでより分析を行いやすくするのです。
同じ科目を担当するときに、前回の振り返りシートを見るだけで生徒のつまづきやすい部分や自信がうかくいかなかった授業を思い出すことができます。
また、デジタルデータはAI活用とも相性が良く、忙しい毎日の中で手軽に分析を行うこともできます。
▼手書きのワークシートをデジタル化して生成AIで分析する方法は、こちらの記事で紹介しています。

せっかくの振り返りシート。
生徒に返却をする前にデジタル化して、自身の「資産」にしましょう!
⑦成績には入れない
時々、せっかく振り返りシートを導入しているのに、それらを成績に入れてしまっている場面を目にします。
これは非常にもったいない取り組みです。
「評価されるもの」になると、どうしても「よく見せよう」という意識が働きがちです。
素直な気づきや葛藤を自由に書いてもらうためにも、成績とは切り離すことが大切です。
出したか出さないかによる主体態の評価は本末転倒です。
パフォーマンス課題を別に実施するなど、振り返りシートとは切り離しておくことがよいでしょう。

外発的な動機付けに頼らない、本来の意味を持った振り返りシートにすることが大切ですね!
おわりに──振り返りシートは“学びをつなぐ道しるべ”
振り返りシートは、ただ「書かせる」だけの存在ではありません。
生徒にとっては、自分の学びを言語化し、気づきや課題を明確にするツールです。
そして教師にとっては、授業改善や生徒理解を深めるための貴重なヒントに活用できるものです。
今回紹介した以下の7つのポイントは、どれもすぐに実践できるものばかりです。
このように「意図をもって活用する」ことで、振り返りシートは単なる記録ではなく、学びをつなぐ「道しるべ」になります。
- 一人ひとりの生徒が、自分の学びに向き合う。
- 先生方の授業が、より豊かで深い学びへと進化していく。
そのような振り返りシートを、ぜひ授業で活用してみてください。

今回の記事がよりよい授業を目指す先生方の参考になれば嬉しいです!
▼今回の記事に興味を持ってくださった方は、こちらの記事もどうぞ!
振り返りシートが大切と聞いたので、とりあえず試してみました。
でも自分の中で効果的な使い方が腑に落ちてなくて…。